なぜ、建物調査診断が大切なのでしょう。
大規模修繕工事の定義は『大規模修繕工事とは』の項でお話したとおりですが、
その定義に従って、全ての対象箇所に対して修繕を実施するには大きなコストがかかってきます。
限られた修繕積立金の中で、より効果的に大規模修繕工事を実施するためにはどうすればよいのでしょうか。
その答えは、建物の劣化状況を見極めることにあります。
まだ不具合の発生していない、かつ十分に機能している箇所を、どう考えるかです。
次回の大規模修繕工事まで見送ることが可能な状態であれば、あえて工事項目から除外することで、その分のコストは削減することができます。
とはいえ、不具合が発生してから手当てを行う事は、かえってコストが増大する傾向にあります。
このような、劣化状況を見極める必要を満たすのが、建物調査診断です。
マンションの大規模修繕工事を計画するにあたり、一般的にはマンション長期修繕計画に基づいて進められます。
定期的に建物調査診断を実施し、直近の劣化状況を確認することで、長期修繕計画の内容も見直すことができれば、
より合理的な資産価値の維持が可能になるでしょう。
また、分譲マンションの大規模修繕を実施する上で、最終的な決定は管理組合の総会で行われます。
合意形成を図ることも重要な課題になるわけですが、工事項目を設定する過程で、その妥当性を裏付けるためにも、
建物調査診断を実施することは大変有効と言えます。
万が一、適切な修繕が行われなかったことによる外壁タイルの剥落などが発生し、
結果的に第三者に損害を及ぼした場合、管理組合が責任を問われる場合もあります。
このようなリスクを回避することを目的として、建築基準法では
「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」(建築基準法第8条第1項)
とされています。
そして特に、タイル貼り・モルタル仕上などのマンションは、建物の竣工、
改修などから10年を経ている場合は、3年以内に外壁の「全面打診調査」を実施するよう示されています。